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もうじやのたわむれ 9 [もうじやのたわむれ 1 創作]

「もう一つ質問をして宜しいでしょうか?」
「はい、もうどんどん、何なりともお聞きください」
 審問官が愛想の良い笑いを浮かべるのでありました。
「質問と云うのは、お二方のお名前の事なんですが。・・・」
「ああ、我々の名前ですね。ここへいらした亡者の方によく質問されますよ」
 審問官がそう云いながら記録官の方へ顔を向けるのでありました。記録官もほぼ同じタイミングで首を回して審問官の方を向くのでありました。二人は顔を見あわせながら破顔した後、揃って拙生の方を見るのでありました。
「当然、赤鬼と青鬼を連想されますかな」
 記録官が云うのでありました。
「ええ、まあ、そう云うことです」
 拙生はその手の連想をこの二人が実はあんまり快く思っていないのか、それともそれ程げんなりもしていないのか慎重に確かめるために、少々遠慮がちに、上目でおどおどと二人の表情を窺うのでありました。
「私の先祖は代々、赤鬼局員でした」
 審問官が云うのでありました。「恐ろしく遠い昔の話ですがね」
「私の方は青鬼局です」
 記録官が同じ口調で云うのでありました。
「大昔の閻魔庁の審理は、今とは全く違ってそれはそれは高飛車で、非情で、途轍もなく厳しいものだったんです。それに煩雑でもありました。先ず宋帝王審理所と云う処でその亡者様の娑婆での淫行を審理して、その後五官王審理所で生前ものした妄言の質と量を審理して、その後に閻魔大王審理所が総ての項目を審理するんです。亡者様はここまでに三回の審理を受けることになっていました。これが審理とは云うものの、脅したり賺したり拷問じみたことをしたりが横行していたのです。特に閻魔大王審理所の審理は殴る蹴るは当たり前と云う按配で、それはもう、亡者様にはこれ以上恐ろしいものはないと云った有り様だったのです。それに、審理はこれで終わりと云う事はなくて、その後にも変生王審理所、泰山王審理所と云う処でもう二回審理が行われるので、都合五回の審理が行われていました。それまでに要する日数が四十九日間です」
「へえ、五回もですか!」
 拙生は大袈裟に語尾を裏返すのでありました。「向こうで云う四十九日法要と云うのは、この一連の審理が総て終わった日と云う事なのですね?」
「お察しの通りです」
 審問官が頷くのでありました。「しかもこの五回の審理は、向こうの裁判の三審制とか云う性質のものではなくて、云ってみれば勝ち抜き戦なのです」
「勝ち抜き戦?」
 拙生は語尾を上げて首を傾げるのでありました。
「各審理所で一回でもダメ出しされたら、そこでもうすっかりアウトなのです」
(続)
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