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大きな栗の木の下で 95 [大きな栗の木の下で 4 創作]

「俺は一月二十日。一年で一番寒い日だよ」
「ふうん。するとあたしの方が半歳くらいお姉さんになるのね」
 沙代子さんが指を折りながら云うのでありました。「あたしは七月二十日。暑い時に生まれたの。それと明日から夏休みが始まるって云う日」
「へえ。月違いの同じ二十日なんだ」
「そうね。偶然の一致ね」
 沙代子さんがそう云うのを聞きながら、御船さんはとくに意味はないのでありましたがなんとなく嬉しくなるのでありました。
「誕生日会なんてやる、最近?」
「いやあ、小学生の頃は友達呼んでやったことあるけど、もう最近はとんと」
「あたしもそうね。クリスマスパーティーみたいなこともやらなくなったし」
 沙代子さんはそう云って少し寂しそうな表情をして見せるのでありました。
「俺の親父の誕生日が実は十二月二十四日なんだけど、クリスマスも親父の誕生日会もウチはやったことがないかな。ウチはあんまり儀式めいた事はやらない家だし。それに、親父の誕生日会なんて、若しそんなことやられても冗談じゃないって感じだし、返って大いに迷惑なだけだな。ま、ウチは、その後にある正月祝い一本槍」
「あたしの処はお父さんの誕生日もお母さんの誕生日も、それにお兄ちゃんの誕生日も、ちゃんとしたパーティーなんかはしないけど、ショートケーキくらいは買うわよ、なんとなく。プレゼントなんて云うのはないけどさ」
「誕生日のケーキねえ」
 御船さんはそう云って顎を撫でるのでありました。「俺、小学生の頃はケーキは好きだったけど、今はケーキなんかより、豚カツと大盛りの御飯とかの方がいいな。お菓子よりは飯だ。それも脂っこくてずっしり腹にたまるヤツ。そう云えば、クリスマスは不二家のアイスクリームケーキなんて云うのがあったよな」
「ああ、それあたしも知っているわ。ウチでは近所のケーキ屋さんに頼んで、クリスマスイヴに持ってきて貰って、前はよく食べたわ」
「俺はそれ、実は食ったことがないんだ。勿論家ではクリスマスなんてやらないから食わないし、一度友達の家にクリスマスで呼ばれたことがあったけど、その時も出なかったし」
「アイスクリームケーキ、すごく美味しかったわよ」
 沙代子さんは目を見開いて、深い笑窪を両頬につくるのでありました。
「今は売ってないのかな?」
「そうね、あんまり見ないわよね。まあ、あることはあるのかも知れないけど。それにあたし、今はアイスクリームケーキなんかより普通のケーキの方が好き」
「俺は、豚カツと大盛り御飯!」
 御船さんはとっておきの自慢話をしているような、妙に得意満面な顔をするのでありました。それを見て沙代子さんが口を隠して笑うのでありました。
「成長期だからね。でも、あたしはケーキも好き」
(続)
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