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枯葉の髪飾りCCⅩⅩⅤ [枯葉の髪飾り 8 創作]

 しかし一方に、そう云う椿事を秘かに期待している自分が居るのでありました。そうなったら仕方がない、後先考えずに暴れるだけ暴れてくれようと秘かに拳に力を入れている拙生でありました。しかしまあ幸いなことにそれと思しき男達と出くわす事態など、とんと起こりはしないのでありました。
 同じクラスの友人が突然拙生のアパートを訪ねて来て、大学当局がロックアウト戦術に出たと教えてくれるのでありました。その日の早朝、大学当局は抜き打ち的に機動隊の出動を要請して、大学構内に居るヘルメットの学生を一挙に追い出し、固く校門を閉ざしてその前に厚い機動隊員の壁を作ったと云うのであります。その友人が朝大学に行ってみると、追い出されたヘルメットの学生達が投石したり機動隊員の壁に波状的に突入を試みたり、それを迎え撃つために学生目がけて放水車が強水圧の水を浴びせかけたりと、付近一帯は騒然たるあり様だったと彼は興奮気味に語るのでありました。
「新聞記者が大勢居たぜ。ヘリも飛んでたから、今日のニュースでやるんじゃねえか」
「ふうん、学生運動も大体が内ゲバに明け暮れしているばっかりで、今じゃ下火とか云う話しだけど、そうでもないのかね?」
 拙生の言い草はなにやら全くの他人事のようだと、云いながら思うのでありました。
「まあ、暴れているウチの学生は、全体からみれば確かに一握りだろうけどさ。それでも後ろに色んなセクトがついているから、それなりの規模にはなるんだろうな」
「で、俺等はどうすればいいんだ、ロックアウトになったら?」
「さあね。お前ん処に来る前に山口の処に行ったんだけどさ、山口の話によると間違いなく年内はロックアウトの儘で、ひょっとしたら年が明けても大学には入れなくて、後期試験はレポートになるかも知れんと云ってたけど」
 山口と云うのは矢張り同じクラスの友人で、長野出身の二年浪人して大学に入った男であります。我々よりは年嵩のためか諸事に通じているような顔をしているので、なんとなく世間知らずの他の連中は彼の言を頼りにしているところがあるのでありました。
「今後の指示とか、大学から通知のようなものが来るのかね?」
 山口の観測だけでは心許ないと思ったから拙生はそう聞くのでありました。
「さあ、それもどうかね。その内落ちついたら、張り紙くらいは校門に出るかもね」
「ほんじゃあ、その確認に一応毎日、学校には行かなくちゃならんわけだ」
「山口が殆ど毎日様子を見に行くと云ってたから、なんか動きがあったら、あいつが知らせてくれるだろう。山口はどちらかと云うと学生自治会寄りの意見だから、あいつもひょっとしたらその内、暴れる側の学生に交じってなんかやらかしたりするかもよ」
「ふうん。ま、そんじゃあ暫くは、山口からの連絡待ちと云うことでいいのか、俺達は?」
「そうね、それで大丈夫なんじゃないの」
「お前はどうすんだ、当面?」
 拙生はその友人に聞くのでありました。
「うん、丁度良いや、バイト三昧で、冬休みのスキー旅行の資金稼ぎだな」
 まあ、周りの一般の学生と云ったら大体はこのような気分でありましたか。
(続)
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