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枯葉の髪飾りCL [枯葉の髪飾り 5 創作]

「水商売のアルバイトは、お給料の良かと?」
 吉岡佳世がお兄さんに聞くのでありました。
「おお、他のチマチマしたアルバイトの倍くらい出るともあるぞ」
「へえ、倍ですか。そりゃあ良かですねえ」
 拙生がそう感心すると、間髪を入れず彼女のお母さんがその会話に待ったの手を差し出します。
「ダメダメ、どがん給料の良くても、水商売はだめ。学生がそがんことしたらダメけんね。なまじ給料の良かったりすれば、そっちに気ばとられて、勉強なんかいっちょんせんごとなるに決まっとる。それに佐世保の田舎者が急にそがん処でアルバイトなんかしたら、妙な感化とかば受けて、結局身ば持ち崩すけんね。」
「そりゃあ、極論ばい。結局本人次第くさ。それに、そがん妙な感化とか云うとも、実際はそうはなかとばい。結構皆真面目に働いとるとばい、大体は」
 彼女のお兄さんがそんなことを云うのは、お母さんに云われているのであろう小言への弁明なのでありましょうか。
「水商売には綺麗かお姉さんの一杯おらすけん、ふらふらってなるかも知れんよ井渕君も。そしたら困るやろう、佳世?」
 彼女のお母さんがそう吉岡佳世に話をふるものだから、彼女は拙生の顔を見るのでありました。見られた拙生が彼女の視線に必要もないのに何故かどぎまぎしたのは、これは実に以て拙劣なる反応と云うものでありました。
「うん、それは困る。井渕君、水商売のアルバイトしたら、絶対ダメよ」
 水商売と云ってもそう云ったものばかりではなくてもっと業態は広いのだと、彼女のお兄さんが云い足すのではありましたが、吉岡佳世は拙生を鋭い目でじいっと見据えるのでありました。
「まあ、オイは妙に鈍感で、そのくせ人の好き嫌いのあるけんが、向いとらんやろうなあ、水商売て云うか、そう云った接客業一般は」
 拙生はそう云いながら吉岡佳世の顔を上目に窺うのでありました。
 彼女のお兄さんの旗色が悪くなったので、しかもなんの覚えもないと云うのに、とばっちりで拙生の旗色までくすんできたものでありますから、その話はなんとなく切り上げになるのでありました。その後拙生は吉岡佳世と一緒に彼女の部屋に引き下がるのでりましたが、別れ際彼女のお兄さんはもし佐世保と東京の行き帰りに立ち寄ることがあるならと、京都の自分の連絡先を教えてくれるのでありました。
 彼女の部屋で夕方まで過ごして、当然のように部屋から出しなに長く唇をあわせて、拙生は彼女の家を後にするのでありました。
「明日は公園でデートしようね」
 吉岡佳世はそう云うのでありましたが、万が一のことを考えて公園での待ちあわせではなく、拙生が昼頃に彼女を家まで迎えに行くことにするのでありました。体調が良かったものだから、彼女は帰る拙生を送るため最寄りのバス停までついて来るのでありました。
(続)
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