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枯葉の髪飾りCⅩⅩⅩⅨ [枯葉の髪飾り 5 創作]

 拙生は大いに笑うのでありました。拙生の腕に掴まって吉岡佳世も笑い出します。
「ああ、恥ずかしかった」
 吉岡佳世が拙生の耳元でささやくのでありました。「いきなり大きな音が、出るとやもん」
 彼女は顔を赤らめて照れ笑いながら拙生を上目で見ています。
「何ごとかて、周りの人の一斉にこっちば見らしたばい」
 拙生はそう云って彼女を余計たじろがせるのでありました。
「早う、文房具売り場に行こう」
 吉岡佳世は拙生の腕を引いて、一刻も早くこの場から立ち去ろうとするのでありました。拙生と彼女は時々吹き出しながら文房具売り場へと歩くのでありました。
 文房具売り場で彼女が買おうとしているものは写真立てでありました。
「あんまり恰好良かとが、ないね」
 吉岡佳世はそう云いながらも、三点程の候補の中から自分が一番気に入った薄桃色をしたシンプルなデザインのものを選んで買い求めるのでありました。綺麗に包装された写真立てを受け取ってから、店員が去るのを見計らって彼女はそれを両手で持って拙生に差し出すのでありました。
「これ、あたしから、高校卒業と大学進学祝いのプレゼント」
「あれ、オイに買うてくれたとか?」
 拙生は差し出されたそれを見るのでありました。
「うん。よかったらさ、これにあたしの写真入れて、東京で机の上に置いといて」
 彼女は先程のブーブークッションの時とはまた違った趣の、恥ずかしげな表情をして見せながら云うのでありました。
 拙生は差し出された拙生へのプレゼントを両手で受け取るのでありました。まるで卒業証書を授与された時のようなその拙生の仕草は大仰で、不相応な丁寧さを彼女に感じさせたかも知れません。
「有難う。なんか嬉しかぞ、矢鱈に」
「本当?」
「うん。これにお前の写真ば入れて、机に飾っとくけんね、絶対」
 拙生は思ってもいなかった彼女の心尽くしに、甚く感動しているのでありました。
「井渕君に買って来てもらった、東京の写真立てに比べると、なんかあんまり恰好良くないけどさ、でも、我慢してね」
「いやあ、そがんことはなか。ずうっと大事にするけん」
 拙生はもし人目がなかったら彼女を抱き竦めていたでありましょう。
「屋上の遊園地で、ジュースでも飲んで行くや?」
 文房具売り場を後にする時に拙生は彼女にそんな提案をするのでありました。
「うん、でも人混みの中より、またあの公園に戻って、二人でお話しばしようよ」
 吉岡佳世の提案の方が確かに好ましいと考えて、拙生と彼女は玉屋デパートを出て、今度は佐世保川沿いの道をゆっくり歩いて病院裏の公園へと戻るのでありました。
(続)
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