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枯葉の髪飾りLⅩⅩⅩⅥ [枯葉の髪飾り 3 創作]

 開けて二日の日、拙生は午前中に吉岡佳世の家を訪ったのでありました。あんまり遅く行くと彼女の入院準備に支障をきたすかもしれないと、これは至当な気遣いかどうかはあまり自信がないのでありましたが、しかしそう慮って早めの訪問にしたのでありました。
 彼女のお母さんと彼女は居間でテレビを見ているのでありました。彼女のお兄さんは昨日飲み過ぎてまだ部屋から起きてこないと云うことでありました。彼女のお父さんは年始回りに出掛けたと云うことで不在でありました。
「明日はあたしの入院の日やから、お父さんは今日の内に、会社関係の挨拶回りば済ませとくとて。井渕君に宜しくて云いよらしたよ。ゆっくりあたしと話していってくれって」
 吉岡佳世は居間に拙生を招じ入れた後、お父さんからの伝言を拙生に云い渡すのでありました。
「明日入院て云うとに、なんか、のんびりしとるねえ」
 拙生はまるで修学旅行前のように衣類やら洗面用具やらが部屋に散らばって、それを片っ端からバッグに忙しなく詰めているお母さんと彼女の姿を想像していたものだから、何時もと変わらない居間の様子や悠長にテレビを見ている二人に、なんとなく自分勝手に拍子抜けするのでありました。
「入院の用意て云うても、別に大したことはなあんもなかし。井渕君、ゆっくりしていってね。お昼はウチで食べていけばよかし」
 彼女のお母さんが悠長な口調でそう云うのでありました。
「いや、昼食前にお暇しますけん、オイ、いや僕は。佳世さんに渡す物ば渡したら、それで今日の目的は完了ですけんが」
 拙生はそう云った後ズボンのポケットからお守りを取り出すのでありました。「これは来がけに八幡神社に寄って買うてきたと。八幡さまのお守りが利くかどうかは、よう判らんばってん、一応病気平癒て云うことで買うてきた」
 拙生はお守りを吉岡佳世に手渡します。
「わあ、有難う」
「そいから、これは」
 拙生はもう一方のズボンのポケットから小さく折り畳んだ紙片を取り出します。「一応お神籤も引いてきた。一応本人の生年月日で引いたとけど、代理のお神籤引きで効果のあるかどうかは、これもよう判らんやったばってん、取り敢えず、大吉」
「有難う。なんかすごく嬉しか」
 吉岡佳世は拙生の顔をその円らな瞳で見ながら礼を云うのでありました。彼女にそうやって見られると何時も拙生はどぎまぎとしてしまいます。もう大分慣れたつもりでありましたが、まだまだ拙生の心臓は彼女の瞳が苦手のようであります。
「お神籤は引いた後、神社の木に結んでこんでよかと?」
 吉岡佳世がそう聞きます。
「凶なら結んでその悪運ばお祓いしてもらわんばけど、吉なら持って帰ってよからしか」
 拙生はそんな説明をするのでありました。
(続)
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