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枯葉の髪飾りLⅩⅩⅥ [枯葉の髪飾り 3 創作]

「そいけん、あたしが云うたやろうが」
 島田が安田に険しい目を向けるのでありました。
「せっかくけんが、安田は小城羊羹にも蝋燭ば立てて、自分で吹き消せ」
 隅田が云うのでありました。
「そがんことば云うたらだめ。安田の馬鹿ちんは本当にそう云うこと、しかねんけんね」
 島田が今度は隅田に鋭い視線を送るのでありました。島田が隅田を窘めている傍から、その横で安田がケーキから外された蝋燭を一本取り上げようとします。
「ほれ、止めんね」
 島田が安田の蝋燭に伸ばされた手を叩くのでありました。
「さっきから観察しとると、島田君と安田君は実によかコンビねえ」
 吉岡佳世のお兄さんが云うのでありました。「そのまま大阪にでも行って漫才コンビで売り出せば、そこそこ人気の出るとやなかろうか」
「夫婦漫才て云うことになるばいね、そうなると」
 拙生が云います。
「冗談じゃなか」
 島田がすぐに否定します。「なんで安田の馬鹿ちんと漫才ばせんばならんとね、このあたしが。第一『夫婦』て云うとが気に入らん」
「島田は五組の、ロック歌手の田代ば好いとるとけん、オイの出る幕なんかなかさ。ねえ」
 安田が島田の方を向いて云います。
「やぐらし! そこであたしに、ねえ、て云うな」
 島田が安田に歯を剝くのでありました。
「なんか、今のかけあいとかもピッタリの呼吸、て云う感じぞ」
 吉岡佳世のお兄さんが拍手をするのでありました。そのお兄さんの拍手に島田は不快そうな表情をし、安田は薄笑いながら一礼して見せるこの好対照は、これはもう長年鍛え抜かれた名コンビのものでありまして、既に絶妙の芸の域に達している風格であります。
 こうしてクリスマスパーティーはまだまだ続くのでありましたが、吉岡佳世の手術を控えた激励会の風あいがちゃんと演出出来たかどうかは拙生には少々疑問でありました。まあともかく、当の吉岡佳世がよく笑っていたし、途中疲れた様子も見せることなく過ごしていたのでありますから、彼女の肩を叩いて頑張れと云うような類の、律儀な激励会などよりは気楽でよかったのかも知れません。
 夜の九時頃まで拙生達は吉岡佳世の家で飲み食いしながら騒いで、それでようやくこの日のクリスマスパーティーはお開きとなったのでありました。帰りしな玄関まで送りに来た吉岡佳世に、明後日月曜日の二学期の終業式には登校するのかと島田が聞くのでありました。
「うん、その積もり。坂下先生にも手術前にちゃんと挨拶しときたいから。それに、月曜日は最後、の日やからね」
 吉岡佳世はそこで少し口籠るのでありました。「そう、二学期の、最後の日やから」
(続)
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