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枯葉の髪飾りLⅩⅩⅣ [枯葉の髪飾り 3 創作]

 その赤いサンタクロースの履物を意匠したのであろう紙の長靴には、ラムネ菓子やマーブルチョコレート、色取りどりのドロップス、ウイスキーボンボンなどが、袋に小分けされてぎっしり詰まっているのでありました。
「クリスマスの時期しかこのお菓子はないけん、つい買ってきたと」
 島田が云います。
「それからこれも」
 安田がそう云いながら取り出したのは一本の小城羊羹でありました。「表面の砂糖でカチカチになったとは、オイの大好物けんが買うてきた」
「態々、クリスマスに羊羹ば食べんでもよかやろうて云うたとやけど、安田のどうしても買うて云うて、駄々ば捏ねるけん」
 島田がうんざりしたように云うのでありました。その島田の顔に、拙生は島田と安田があれこれ云い争いながら買い物をしているその光景が見えるようでありました。尤も島田にうんざりされたのは安田ばかりではなくて、食事が始まって鰯の天ぷらとスボ蒲鉾が出てきた時に、これは拙生と隅田が調達した物であることが知れて、先程の安田同様クリスマスの食材としてあんまり穿ったものとは云えないのではないか、これではまるで普段の食事と変わらないではないかと島田をして舌打ちさせたのでありました。
「あんた達のセンスは所詮、その程度やろうとは思うとったけど」
「ウチは浄土真宗けん、バテレンの様式はよう知らんもんね」
 これは拙生の云い訳でありますが、二度目となると吉岡佳世のお母さんは拙生の軽口に思いもつかぬ食いつきをしてくることはなかったのでありました。
 飲み物や我々が買っていったもの以外のあらかたの料理は、吉岡佳世のお母さんが用意してくれたものでありました。どちらかと云うと其方の量のふんだんさによって、卓上の豪華さは形成されていたと云った方が当たっていたでありましょう。それに食事の後に出されたクリスマスケーキは大振りのもので、七人で均等に分けたら各自の割り当ては相当の満足いく大きさになるはずでありました。
 夫々の前に安田の買ってきた小城羊羹が二切れずつ配られ、卓の中心に二つのクリスマスツリーに挟まれてケーキが鎮座しているのでありました。ケーキには蝋燭が七本立ててあります。この七本はケーキを囲む者の数と対でありましょうか。
「そしたら蝋燭に点火しようか」
 吉岡佳世のお母さんがそう云って彼女のお兄さんの方を見ます。彼女のお兄さんがマッチを擦ってその火を蝋燭に移します。七本の蝋燭総てに火が灯ると吉岡佳世が立って天井の蛍光灯を消すのでありました。
「おう、如何にもクリスマスの雰囲気の出てきたね」
 安田が喜ぶのでありました。
「しかし、この蝋燭の火は誰が消すとか?」
 隅田が云います。「誕生日なら、消す人間は決まっとるけど、クリスマスの主役て云うとは、誰が務めることになっとるとやろうか」
(続)
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