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枯葉の髪飾りLⅩⅣ [枯葉の髪飾り 3 創作]

 吉岡佳世が学校に出て来た日は二人で同じ空間に居られることを慈しむかのように、拙生と彼女はなるべく寄り添って一緒に時を過ごすのでありました。勿論、学校と云う場から浮き出ないような配慮の上でのことではありましたが。それでもまあ、周囲には寸暇を惜しんでいちゃついているように見えていたでありましょうか。隅田や安田、それに島田も拙生と吉岡佳世の熱気に当てられたように、我々に近づくことを遠慮しているようでありました。しかし彼等やクラスの他の連中の視線など構ったことではないのでありました。拙生は元気な顔で吉岡佳世が学校に出て来たと云うそのことだけで、もう、矢鱈に嬉しくて仕方がなかったのでありました。
 そんな日は学校が引けた後も拙生が彼女の家に帰りがけに寄ったり、偶に二人で市民病院裏の公園に行って今度は二人だけの時間を過ごすのでありました。どうせ拙生は受験勉強の方は、あわよくば何処か入れてくれる大学があればそれで幸せと云う魂胆でいたものでありますから、然程に気にかからないのでありました。受験生としては名ばかりのいい加減な受験生であります。
 一度彼女が学校を休んだ日に、あまりに拙生一人だけで何時も彼女の家に行くことに気後れしたものだから、隅田と安田それに島田を誘って出かけたことがありました。当然ながら大和田を誘うことはしません。大和田はあの拙生に殴打された一件以来、もう我々を避けて決して傍には近づかないのでありました。大和田は学校に居る間中ほとんど一人で誰とも会話することもなく、ノートや参考書を開いて過ごすのでありました。勿論拙生はあれ以来彼とは何の交通もありません。隅田も安田も大和田と関わりあうことを避けている風でありました。
 吉岡佳世を見舞うのに多人数では迷惑かとも拙生は思ったのでありますが、偶には大勢でワイワイ押しがけるのも悪くはないかと企んだのでありました。そう云う訪問も彼女の気持ちを引き立てるのに有効ではあるはずであります。それにどうせ拙生は、この先何時でも彼女と二人きりの時間は持てるのでありますから。
「今日は大勢連れて来たぞ」
 拙生は玄関に迎えに出てきた吉岡佳世に云うのでありました。「大勢で伺うとは迷惑ぞて云うたとですけど、コイツ等がどうしても今日一緒に行くて利かんもんけんが、仕方なく連れて来たとです」
 と、これは一緒に出てきた彼女のお母さんに向かって云った言葉でありました。拙生が誘って連れて来たのが実際であったので、そう云われた他の連中はなんとなく拙生の調子のよさに面食らうような顔をするのでありました。しかし敢えて三人は特に何も言葉を発しないのでありました。
「ああ、よう来てくれたね。さあ、上がって上がって」
 吉岡佳世のお母さんは嬉しそうな顔をしてそう我々を促すのでありました。
 やはり四人での訪問は賑やかでありました。彼女のお母さんも交えて六色の声が笑いさざめきながら混じりあう会話は、拙生だけの訪問とはまた趣が違った楽しさがあります。吉岡佳世の家の居間が俄かに華やぐのでありました。
(続)
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