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枯葉の髪飾りLⅩⅠ [枯葉の髪飾り 3 創作]

 体育祭の日を切っかけに、吉岡佳世がそれまでに比べて学校を休みがちになっていったのは、拙生にはとても心配なことでありました。夏休み以降ほとんど皆勤に近かったのに、十一月が終わる頃には週に二日は欠席するようになったのであります。登校した日は以前通りで元気に過ごしているし、痩せたとかやつれたとか、どこと云って変わった風には見えないのでありますけれど。
 朝の教室に彼女の姿がない日は拙生はひどく気分が落ちこんでしまって、勉強も手につかずに学校に居る間中彼女のことが心配であれやこれやと思い煩うのでありました。体育祭の翌日に彼女の赤い水筒がすぐに見つかったのだから、それを機に彼女の体調や様々な事象は屹度好転するはずであったのですが。・・・
 吉岡佳世が学校を休んだ日は決まって、拙生は帰りに彼女の家に立ち寄るのでありました。学校の配布物などは拙生が彼女の家に届ける役であると、坂下先生以下誰もがそう思っている風で、勿論その役を務めることもありますが、当然そう云う用事がない日であっても拙生は彼女の家に必ず行くのでありました。
 拙生が行くと、時に彼女は自分の部屋で寝こんでいる場合がありました。なんとなく微熱があって体がだるくてなどと寝ていた理由を説明しながら、吉岡佳世は照れたように笑いながらベッドの上に起き上がるのであります。
「起きとこうと思えば、起きていられるとやけど」
 彼女はそう云いながらベッドから出ようとするのでありました。
「熱のあるとやろう、無理せんで寝とってよか」
 拙生は両手を前に出して彼女に掌を見せながら彼女の動きを制します。
「うん、でもほんの微熱やし、ぼちぼち寝てるのにも厭きてきたし」
 彼女は薄黄色の地に小さな赤い花が散りばめられた柄のパジャマを着ているのでありました。
「そんなら皆で居間でお茶にしようか」
 拙生を彼女の部屋まで案内してきた吉岡佳世のお母さんが、ベッドから出た彼女に云います。吉岡佳世はうんと云ってベッドの上に置いてあった赤いカーディガンを羽織ると、拙生と彼女のお母さんの後について居間へ移動するのでありました。
「ぼちぼち風邪の流行る時期けん、その予防もあって無理に学校には行かせんごとしとるとよ。風邪がもとで、ひょっとして肺炎にでもなったらいかんけんね」
 彼女のお母さんが茶を入れて、湯気の立ち昇る湯呑の一つを拙生の前に置きながら云うのでありました。お母さんはそれからすぐに立ち上がり、台所から茶うけの菓子を器に盛って持ってくるのであります。
「九十九島せんぺいなんか食べるかね、井渕君は?」
 お母さんが云います。「佳世は結構好きみたいやけど」
「ああ、オイいや僕も好いとるです」
 拙生は頷くのでありました。ピーナッツと甘いせんぺいの取りあわせが香ばしい、佐世保に昔からある菓子でありました。
(続)
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