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枯葉の髪飾りLⅥ [枯葉の髪飾り 2 創作]

 吉岡佳世とお母さんはまた二人で玄関まで我々を送りに来てくれるのでありました。
「今日は本当に済まんかったね、お陰で助かったよ。有難う」
 吉岡佳世のお母さんが靴を履いている拙生と島田に云うのでありました。その時玄関の呼び出しのチャイムが鳴ってすぐに扉が外から開かれます。靴を履き終えた拙生と島田が振り返るとスーツにネクタイ姿の初老の男の人が立っています。男の人はまさに玄関を入ろうとして、我々の姿に驚いたように運ぼうとした一歩を止めるのでありました。
「ああ、お父さん」
 吉岡佳世がその男の人に声をかけます。「お帰り。学校の友達で井渕君と島田さん」
 彼女は彼女のお父さんの目の前に居る二人がクラスメートであることを告げます。拙生と島田は同時に頭を下げるのでありました。
「ああ、どうも」
 吉岡佳世のお父さんがそう云って我々に笑いかけます。
「ほら、電話で話したやろうが、佳世が学校から病院に連れて行ってもらったて。その時学校から一緒について来て貰うた井渕君と、それから佳世が具合の悪うなったとば、真っ先に先生に知らせてくれた島田さん」
 吉岡佳世のお母さんが続けます。「佳世が学校に残してきた荷物ば届けてくれたと」
「ああ、それは態々済まんかったねえ」
 吉岡佳世のお父さんはそう云って我々に頭を下げるのでありました。お父さんは拙生をその大きな眼で見るのでありました。拙生は思わず緊張してもう一度頭を下げます。
「初めまして、井渕です」
 拙生の後を追ってすぐに島田も自分の名を名乗ります。お母さんの紹介は適切ではなくて、お母さんの云い方では拙生がまるで坂下先生と一緒に病院につき添って行ったように聞こえるであろうけど、実際は後から勝手に行ったのだとそう補足せねばと思うのでありましたが、すぐにそんな事情説明は不要かと考え直すのでありました。
「君が井渕君か。色々佳世がお世話になっとるようで」
 吉岡佳世のお父さんはそう云いながら拙生に話しかけるのでありました。
「いえ、そんな大して」
 拙生は云います。なんとなく緊張し続けているのであります。しかしお父さんの顔の表情と口調から、拙生に対して好意的でなくはない様子がほんのり確認出来た気がしたので、秘かに小さな安堵のため息をひとまず胃の中でつくのでありました。
「もう帰るの?」
 お父さんが聞きます。
「はい。もう遅かけん」
 拙生が応えます。
「ああそう。今度またゆっくり、私が居る時に遊びにおいで。島田さんも是非また遊びに来てやってね、佳世の友達はいつでも大歓迎するから」
 吉岡佳世のお父さんの言葉に隣りで島田が頭をぴょこんと下げるのでありました。
(続)
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