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枯葉の髪飾りLⅢ [枯葉の髪飾り 2 創作]

 玄関に現れた拙生と島田を吉岡佳世と彼女のお母さんは恐縮そうに迎え入れ、吉岡佳世が拙生から自分のバッグを受け取り、遅い時間に態々寄ってくれて有難うとか、余計な手間をかけて申しわけなかったとか、二人交互に我々に恐縮の意を何度も伝えるのでありました。拙生と島田は玄関先で吉岡佳世の荷物だけ置いて、容態を聞いたらすぐに帰るつもりであったのですが、お茶だけでも飲んでからと云う吉岡佳世のお母さんの勧めに甘えて家に上がりこむのでありました。
 居間のテーブルの上にはノートと参考書が広げてあります。
「大事ばとって寝とるてばっかい思うとったとに、勉強なんかしとったとね佳世は?」
 居間に通されると島田は入口の引き戸の傍らに座りながら云うのでありました。拙生は島田がそこに座ったものだから、なんとなく自分だけテーブルの前まで行って座るわけにもいかず、島田の横に畏まって正座するのでありました。
「もうなんともなかもん、体の方は。テレビも今の時間面白か番組もやっとらんし、なんとなく気が向いたから勉強しとったと」
「へえ、偉かねえ」
 島田が云います。
「受験生けんが寸暇を惜しんで勉強するとは、当たり前のことくさ、ねえ」
 拙生は吉岡佳世の代弁をするのでありました。
「そがん皆みたいに、時間を惜しんで勉強に精ば出してるんじゃなかとよ、実際は。第一あたしは、学校の普通の勉強も遅れとるとやから。まあ、真似ごとみたいな感じ、あたしの受験勉強は」
「卒業も危なかとやしね、この子は」
 吉岡佳世のお母さんが客用の湯飲み茶碗を台所から持って来て、それをテーブルに置きながら云うのでありました。「ほら、そがん隅っこに座っとらんで、テーブルの方に来て座って。佳世、テーブルの上ば片づけんね」
 吉岡佳世はお母さんにそう云われて、ああそうだと云う表情をして急いで広げていた参考書とノートと筆箱を重ねて、テーブルの下に隠すように仕舞うのでありました。最初に拙生がこの家に来た時彼女のお兄さんが座っていた席に吉岡佳世がついて、拙生はこの前と同じ所に、拙生の隣りのこの前吉岡佳世が居た席に島田が座ります。
「あんた達、晩御飯はまあだ食べとらんとやろう?」
 吉岡佳世のお母さんが、急須から四つの湯飲み茶碗に順番に少量ずつ何度も茶を注ぎ入れながら聞くのでありました。
「ええ、まだ学校の帰りですけんが」
 拙生が応えます。
「よかったらウチで食べて行かんね?」
「いやあ、それじゃあ申しわけなかけん遠慮しときますです」
 拙生は島田と顔を見あわせてからそう断るのでありました。「バッグば届ける序でに佳世さんの様子ば、もうちっとよう見ようて思うて上がりこんだだけですけんが」
(続)
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