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枯葉の髪飾りLⅠ [枯葉の髪飾り 2 創作]

 島田が此方へやって来ます。
「あんた達、なんばしよるとね」
 その彼女の言葉は拙生だけではなく、拙生の蛮行を止めに入った隅田と安田もひっくるめて非難するような口調でありました。
「済まん、島田、驚かせてしもうて」
 拙生はそう云って島田を見るのでありました。
「いきなり殴りつけたとね、大和田君ば?」
「うん。つい、かっとしてね」
「ま、大和田の方に非があるとばってんがね」
 隅田が拙生に対する島田の詰責の視線を少し和らげようとしてくれます。
「そいでも、いきなり殴るのは酷かとやなか?」
「ああ、判っとる。オイが悪かったと」
 拙生は項垂れて自分の足下に視線を落とします。耐えがたい疲労感が拙生の全身に隈なく充満しているのでありました。大和田の残していった「欠陥品」と云う言葉がこの時にはもう、大和田を殴りつけた根拠としてではなく、拙生自身を責めるための言葉に変容していたのであります。夕闇と重苦しい沈黙の中で、四人は暫く黙ったまま立ち尽くすのでありました。
「兎に角、早う佳世の家に行かんと、遅うなるし」
 島田がそう云うのを切っ掛けに、四人はまたバス停までの道を歩き出すのでありました。誰も一言も言葉を発しないのでありました。そう云う気まずい雰囲気を招来させてしまった責は総て拙生にあるのであります。
「皆、悪かったな。不愉快な気分にさせてしもうて」
 だから拙生は取り敢えずそう謝るのでありました。なんとかこの重く泥んだ沈黙を破って、誰かが拙生の言葉に応答してくれるのを願ってのことでありました。
「しかし大和田には呆れるぞ」
 隅田が云うのでありました。「井渕の気持ちはよう判る。オイが井渕やったとしても、やっぱい殴ったかも知れん、大和田ば」
「大和田が欠陥品て云うたとか、吉岡のことば?」
 安田がそう訊きます。安田は先ず拙生に質そうとしたのですがすぐに躊躇って、隅田の方に視線を移しながら語尾を収めるのでありました。
「うん。無神経けんがね、大和田は」
 隅田が応えます。「オイとの話の中で云うたとやけど、まさか井渕に聞こえるとは思わんやったとやろう。しかしオイもムカっとしたぞ、聞いた瞬間」
「配慮とか、なあんもせんヤツけんね。大和田も相当馬鹿ちんばい。島田の馬鹿ちんは罪のなか馬鹿ちんやけど、大和田のは始末の悪か」
「なんであたしが、此処で出てると」
 島田が口を尖らせて、安田に引きあいに出されたことを抗議するのでありました。
(続)
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