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枯葉の髪飾りⅩLⅦ [枯葉の髪飾り 2 創作]

「坂下先生にちょっと教室に行っとけて云われたけん、せっかく田代君の演奏の途中やったとに、態々こうして戻って来たとたい」
 島田が田代の悪態に対して少し声を荒げて返すのでありました。
 暫くして坂下先生が教室に入ってくるのでありました。坂下先生は拙生と島田の他に隅田と安田と大和田が居るのが少し意外なように、我々をゆっくり見渡すのでありました。
「なんか関係なか奴まで居るごたるばってん、まあ、よか」
 坂下先生はそう云って我々の方へ来て、それから少し離れた所に居た島田の方を向いて手招きをするのでありました。島田もこちらへやって来ます。
「吉岡のことばってん、そがん大事にならんで済んだ。病院から出る時はいつものごと元気にしとったし。大事ばとって今は病院から直接家に帰って休んどる。一応島田にもその後の経緯ば報告しとこうて思うて、ここに呼んだと」
 坂下先生は島田の方を向いてそう云います。島田は坂下先生の報告に神妙な顔つきで一つ頷くのでありました。坂下先生は拙生の他にもう知っている者もあるかも知れんがと前置きし、吉岡佳世が生れつき心臓が弱いこととか、彼女が学校を休みがちであるのはそのためであるだとか、卒業のことを鑑みれば吉岡佳世の出席日数が微妙な線にあることだとか、彼女について我々に少し詳しく話をするのでありました。
「今日この教室に居って今の話ば聞いたとが縁て思うて、あと卒業までそがん長い時間はなかけど、なにかと吉岡のことば気に掛けてやってくれ、お前達は」
 我々は先程の島田のように坂下先生の言葉に神妙に何度も頷くのでありました。その光景に、差し出がましいことではありますが拙生は吉岡佳世になり代わって、ここに居る他の連中に感謝したい気持で一杯になるのでありました。
 拙生は吉岡佳世から預かった鉢巻を拙生のものと一緒に教室の用具入れのロッカーに戻し、吉岡佳世の机から彼女のバッグをとって拙生のと一緒に肩に掛けるのでありました。
「そいぎんた井渕、吉岡の荷物はお前が帰りに届けてくれよ」
 坂下先生が拙生に云います。体育祭の日は生徒は家から体操服で学校へ来ているのでありますから、弁当と参考書の入ったバッグだけが当日の荷物でありました。
「井渕はこいから吉岡の所に寄るとか?」
 安田がそう聞きます。
「そう。荷物ば届けに行く」
「そんならオイもついて行こうかね。お見舞いがてら」
「そうね、そんならオイも一緒に行こうかね」
 隅田が云います。
「お前達大勢で、ざわざわと吉岡の家に押し掛けるなよ」
 坂下先生が云うのでありました。「今日に関しては、お見舞いて云うごと大げさなことは必要なか。それよりとっとと帰って家で勉強ばせんか。この後のフォークダンスばする積もりで残っとったとじゃなかやろうな、お前等。そがんことじゃつまらんばい。よかか、お前達は受験生ぞ」
(続)
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