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枯葉の髪飾りⅩLⅥ [枯葉の髪飾り 2 創作]

 教室に入ると隅田と安田、それに大和田がそこに居るのでありました。拙生の姿を認めると隅田が拙生に手を挙げながら近寄って来ます。
「井渕、お前、吉岡の運ばれた病院まで行ったとてねえ」
 隅田が云います。「そいでどがんやったとか、吉岡の様子は?」
「まあ、そがん大変な事態じゃなかった」
 拙生はそう云って安田の座っている席の前の机に腰掛けるのでありました。安田の横の席に大和田が座っています。隅田は拙生の横の机に腰を落とします。運動場で行われているロック演奏の音が、かすかに教室まで聞こえてくるのでありました。
「体育祭の終わってから教室に戻ったぎんた、教頭の山口が来て、吉岡の具合の悪うなったけん、坂下が病院まで送って行って、なんか知らんばってん、井渕も一緒に病院について行ったて聞いてぞ、どがんなっとるとかて思うて心配しとったとぞ」
 安田が云います。
「いや、オイは一緒について行ったとじゃなか。後からバスで行ったと」
「なんでお前まで病院に行くとか?」
 今度は隅田が聞きます。
「なんでて云われても、なんばってん・・・」
「お前、勝手に行ったとか?」
 拙生は頷くのでありました。
「坂下に散々怒られたやろうもん」
 安田が拙生の顔を覗きこむように見ながら云うのでありました。
「怒られた、ことになるやろうな、あれは」
「怒られんやったとか?」
 安田は机の上に乗せていた両腕を挙げて頭の後ろに組みながら聞きます。
「明後日までに罰で、中国の歴代王朝名とその王朝ば開いたヤツの名前と、成立年ば全部暗記してこいて宿題ば出されてしもうた」
「なんや、それは」
「なんやて云われても、オイも困るとけど。まあ、お小言程度は食らったばってん、結構さらっとしとったぞ坂下は」
 拙生は安田にそう云うのでありました。
「へえ、あの坂下が、さらっとしとったか」
 隅田が意外そうに云います。
 我々だけが残っている教室の扉が急に開いて、そこへ島田が入ってくるのでありました。島田の方へ我々の視線が集中します。
「あんた達、まだ教室に残っとったと?」
 島田はそう云いながら自分の机の方へ向うのでありました。安田が彼女に云います。
「お前はなんしに来たとか? 五組の田代なんかのロックの演奏ば、口ばポカンて空けて馬鹿面して、うっとり聞きよるてばっかい思うとったのに」
(続)
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