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枯葉の髪飾りⅩLⅣ [枯葉の髪飾り 2 創作]

「井渕君まで来てもろうて、申しわけなかったね」
 吉岡佳世のお母さんは拙生の方を見て云います。
「ああ、いや、どうも・・・」
 拙生はそう口籠って頭を下げながら坂下先生を横目で窺うのでありました。坂下先生はそんな拙生を見てニヤニヤと笑います。
「さて、これからどがんされるですか?」
 坂下先生が吉岡佳世のお母さんに聞きます。
「はい、家に帰ってよかて云われましたけん、このまま連れ帰って休ませようて思います」
「判りました。そんなら我々も学校に戻ります」
「井渕君ご免ね、びっくりさせて」
 吉岡佳世が拙生に云うのであります。拙生は至らなかったところを謝るのは寧ろ此方の方だと思って、恐縮から僅かに目を逸らすのでありました。
「学校に置いてきた吉岡君のバッグは、後でこの井渕にでも届けさせますかな」
 坂下先生が云います。
「それでは井渕君が大変けん、後であたしの方で学校に取りに伺いますよ」
 吉岡佳世のお母さんが顔の前で掌をひらひら横に動かしながら云います。
「いや、大丈夫です。もしそれでよかなら、オイ、いや僕が帰りに届けますけん。」
 どうせ帰りに吉岡佳世の家に寄って彼女の様子を確かめるつもりでいたので、拙生はそう請け負うのでありました。せめてそれくらいはさせて貰わないと、拙生の吉岡佳世に対する申しわけなさが万分の一も解消しませんし。
「井渕君、これ学校に返しておいて貰ってよか?」
 吉岡佳世はそう云いながら、左の手首に巻いていた黄色い鉢巻を外して拙生に渡します。拙生は頷いて彼女から鉢巻を受け取ると、ジャージの尻ポケットにねじ込むのでありました。そこには拙生の鉢巻が元々押しこまれていたのでありますが、彼女の鉢巻と拙生のそれとが拙生の尻ポケットで手を繋ぐのでありました。
 吉岡佳世と彼女のお母さんが病院の玄関先でタクシーに乗って帰って行ったのを見送った後、坂下先生が拙生に云います。
「車ば回すけん、ちょっとここで待っとけ。一緒に乗せて行くけん」
「いや、申しわけなかけんが、オイはバスで戻ります」
「そがん面倒臭かことはせんでよか。どうせ序でけんがね。それにバスで学校まで戻りよったら時間のかかる」
「はあ。まあ、そんなら、済んませんが」
 坂下先生はその前に一旦学校へ電話してから車を回すのでしばらくここで立って待っていろと拙生に云い置いて、また病院のロビーへと戻って行くのでありました。拙生はなんとなく、無断で学校を抜け出した罰として立たされているような気分になるのでありました。しかしともかく、吉岡佳世の体の具合も大事にならずに済んだと云うことに、拙生としては大いに胸を撫でおろすのでありました。
(続)
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