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枯葉の髪飾りⅩⅩⅩⅧ [枯葉の髪飾り 2 創作]

 教室で拙生と隅田と安田で机を四つ寄せて、安田の云うところのディナーテーブルを作ったのでありましたが、大和田はその塊りに参加せず、一人近くの席に座って自分の机から弁当を持って来てそれを広げるのでありました。確かに机を五つ寄せるのは半端ではありましたので、なんとなく自然に大和田が外れるのでありました。
 食事の最中も拙生と隅田と安田は辺り憚ることなく、大声で下らない冗談で大笑いをしておりました。吉岡佳世はその笑いの中に楽しそうに混ざってはいるのですが、やはり疲れているためか自ら進んでやり取りの言葉を上せる風ではありませんでした。途中彼女が普段このクラスで一番よく会話を交わしているらしい島田と云う女子が、我々のディナーテーブルの傍にやって来て吉岡佳世の肩を指でちょんと叩いて彼女を振り向かせます。
「佳世、よかねえ、男に囲まれて。あたしもここに混ざろうかね」
 島田が吉岡佳世に話し掛けます。恐らく島田は別にこの席に本気で混ざりたいわけではなく、単に吉岡佳世への軽いお愛想のつもりでそんなことを云ったのでありましょうが、吉岡佳世は島田の言葉を真に受けて拙生の方に自分の椅子をずらして、一人が座れる空間を作ろうとするのでありました。
「吉岡は特別ぞ。お前はダメ、入れてやらん。普段から横着っか女はここには座れんと」
 安田が島田に云います。
「判っとるさ。あたしもこがん、むさ苦しか男の中に混ざって食事ばする気なんかなかし」
 島田は安田に向かって顔を顰めて舌を出して見せてから、少し腰を屈めて吉岡佳世にだけ話をするのでありました。「体育祭の終ってからフォークダンスのあるけど、その前に五組の田代君なんかのバンドが、余興でちょっと演奏ばさすとさ。そのステージば運動場の真ん中に造るとやけど、その飾りつけ、佳世も手伝ってくれん?」
 五組の田代と云うのは学年一の色男の呼び声が高く、同じ五組の仲間の男四人と女一人でロックバンドを組んでいるのでありました。
「へえ、そがん余興のあるとか? ちいとも知らんかった」
 隅田が箸の動きを止めてそう云います。
「島田は一年生の頃から田代のファンけんが、ここで一生懸命働いて自分ば売りこもうて思うとるとやろう。健気なもんぞまったく」
 安田がそう云ってからかうように島田を指差します。
「やぐらし。別にそがん心算じゃなか。あんた達はどがん見てもロックて云う顔しとらんけん、田代君の曲の凄さなんか元から判らんと。三枚目がごちゃごちゃ云うな」
 島田はそう云って安田を叩く仕草をするのでありました。
「三年生は体育祭の後はフォークダンスも参加せんで、すぐ帰ってよかことになっとるやろう。三枚目であろうがなかろうが、三年生が今の時期、受験ば控えてロックもフォークダンスもあるもんか」
 安田が叩き返す真似をしながら島田に云います。
「一年の頃から思うとったけど、生まれながらにイカさん男ばいね、安田は」
 島田はそう云って安田を見下ろしながら憫笑を浴びせるのでありました。
(続)
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