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枯葉の髪飾りⅩⅩⅩⅦ [枯葉の髪飾り 2 創作]

「もう昼の弁当の時間になっとるとぞ。二人で手ば繋いでこがん処で何時まででんいちゃついとらんで、吉岡も、オイ達と一緒に教室で弁当ば食おうで」
 安田が云うのでありました。そう冷やかされて吉岡佳世は拙生と繋いでいた手を離そうとするのでありましたが、拙生がニヤニヤ笑ってなかなかその手を解放しないものだから、彼女は拙生の顔を見ながら必死で手を引こうともがきます。隅田達が前に立った時にすぐ彼女は繋いでいた手を離そうとはしたのでした。しかし拙生が平気で彼女の手を握ったままでいるものだから、拙生が親しくしている彼等の前ではそのままで大丈夫なのだろうと判断したのでありましょう、殊更手を離そうとする仕草もせずにずっと繋ぎっ放しにしていたのでありました。
「あたしも一緒に?」
 ようやく拙生の握力から解放された手を水筒の上に避難させて、吉岡佳世が安田に聞きます。
「序でくさ。大勢でわいわい云うて食うた方が弁当もうまかやっか。井渕が寂しがるけん、オイ達のディナーテーブルに吉岡も特別ご招待て云うことで」
「ディナーテーブル?」
「まあ、教室で机ば四つ寄せるだけばってんね」
 安田のそのもの云いに吉岡佳世はくすっと笑うのでありました。
「井渕と二人だけで食いたかなら、別にそれでもよかとばってんが」
 隅田が吉岡佳世をからかうように云います。吉岡佳世は拙生の顔を見るのでありました。
「当然吉岡と二人で食う方が弁当はうまかに決まっとるけど、まあ、安田の断っての希望けん、お前達も吉岡と一緒に弁当ば食う光栄に浴させてやろうかね」
 拙生は云うのでありました。
「ありゃま、それは有難かことで」
 隅田がそう云って拙生の肩に空手の突きを入れる仕草をするのでありました。隅田も安田も軽口の遣り取りや表情の端々に、拙生の横にいる吉岡佳世に妙な警戒感を抱かせないように、それに自分達が吉岡佳世に対して友好的であること、拙生と彼女とのつきあいを全く好ましく思っていることを、そこはかとなく伝えようと気を遣っている様子が窺えるのでありました。隅田も安田も結構好い奴であります。
 そんなわけで我々はうち揃って自分達の教室へと向かうのでありました。冗談を飛ばし合う拙生と隅田と安田の横を歩きながら、吉岡佳世が三人の会話に時々笑い声で交るのでありましたが、大和田は少し後ろに外れて我々の軽口の応酬には関心を示さない様子で、全くの無言でついて来るのでありました。
 教室にはクラス全員の内半分程が戻って来ていたでありましょうか。他の者は校庭やら学校内の何処かで昼食をとっているのでありましょう。体育祭の時は学校の敷地の中ならどこで昼食の弁当を広げようと自由でありました。中には学校近くのうどん屋かラーメン屋に出掛けた規則破りもきっと数人居たでありましょうが。で、教室に居る者はそれぞれ勝手に数人寄ったり、或いは一人で机に向かって弁当を広げているのでありました。
(続)
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