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枯葉の髪飾りⅩⅩⅩⅥ [枯葉の髪飾り 2 創作]

「先生とか、誰かに見られるかも知れんぞ」
「あたしは別に、見られてもいいけど」
 吉岡佳世はそう大胆なことを云うのであります。
「英語の吉田とかに見られたら、なんか云われるっちゃなかろうか」
 拙生が云います。英語の吉田と云うのは、三年生の英語を担当する隣のクラスの担任で五十歳代の女の先生あります。なんに依らず口煩い先生でありました。
「ああ、吉田先生はこう云うこと厳しかかも知れんよね」
「不良扱いされて、大問題にされるぞ、間違いなく」
「あの先生、なんでも深刻にしてしまう人やしね」
「ウチのクラスの女子に見られてもお前困るとやなかか? なんやかんや陰で云われて」
「そうかも知れんけど、あたしあんまりクラスの中の女の人とつきあいのなかけん、直接には被害はなかて思うよ、きっと」
「そうやろか」
 拙生はそう心配するのでありました。しかしだからと云って握っている吉岡佳世の手は決して離さないのではありましたが。
 三十分程こうして拙生と彼女は二人で、まあ、他愛もない話に現を抜かすのでありましたが、突然二人の前に三人の男共が立つのでありました。
「おい井渕に吉岡、こがんところで二人でなんばしよるとや?」
 そんなことをニヤニヤ笑いながら云うのは隅田でありました。他の二人も同じクラスの男共で、一人は隅田同様親しくしている安田と云う男と、もう一人はこれはあまり普段打ち解けて会話等交わしたことがない大和田と云う男であります。
 安田もニヤニヤ笑って拙生と吉岡佳世を見ています。大和田は此方を見ることもなく、それに特段の表情もなく、なんとなく隅田と安田よりやや下がった辺りで、拙生と吉岡佳世には興味がなさそうに横を向いてつっ立っているのでありました。
 大和田は隅田とはウマが合うのかよく話をするようでありましたが、拙生と安田とはあまり打ち解けないのでありました。安田に云わせると「大和田は井渕とかオイとか、あんまり“お出来にならん”人間とは話をする必要を感じとらんとぞ」と云うことになるようであります。
 大和田は隅田と同じ九州有数の合格難関大学を目指しているのでありました。確かにそれで隅田とは話が合うと云うのか、共通の話題があるのでありましょう。拙生や安田のように、あわよくばどこか入れてくれる大学があれば喜んでそこへ入りこもうと企んでいる、大望のない輩とは元々違うのであります。まあ、大和田は隅田が拙生や安田とよく話をしているので、仕方なく我々の輪の中に居ると云うような形で我々と混ざっているように見えるのでありました。彼は四人で居る時はほとんど口を開かず、少し体を引いて我々の会話を興味なさそうに聞いていると云った風情だったでしょうか。しかし拙生はこの大和田と云う男には、単なる拙生の思いこみ以上ではないのでありましょうが、もっと何か気質に屈折したものがあるように感じられて、苦手なタイプの男ではありました。
(続)
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