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枯葉の髪飾りⅩⅩⅩⅠ [枯葉の髪飾り 2 創作]

 十月になると高校で体育祭が開かれるのでありました。尤も三年生は受験を控えているために事前の練習もほとんど行わず、本番当日に自分の割り振られた競技に出場すればよしと云うことになっておりました。学年別クラス対抗戦と云う形式でありますが、こと三年生に関してはさして対抗心も煽られることなく、怪我だけはしないように当日を遣りすごせば上出来と云った雰囲気でありましたか。
 しかし各クラスの応援席の後ろに太い竹で高い応援櫓を組むのが体育祭時の伝統でありまして、これは三年生も建築するのであります。もっともこの櫓造りは結構楽しみな作業でありますから、受験を忘れて皆喜々として近くの山から竹の切り出しや運搬、太い針金を使って建築作業の足場を組む要領で、自分達なりの高さとユニークさを誇示するような応援櫓の構築に精を出すのでありました。体育祭前日の、当日よりも余程面白いこの作業に、皆夜遅くまで受験生であることを忘れて没頭するのであります。
 拙生は競技の方は二百メートル障害物競争に出場することになったのでありました。比較的身軽であることを買われての選抜でありましたが、これは競技に勝利するための選抜と云うよりは、他の種目に比較して怪我の確率の高い競技には怪我する確率のなるべく少ない者を当てると云う、受験生であることを視野の端に入れた配慮からの選抜であったのでありましょうか。騎馬戦とか棒倒しと云った格闘の要素のある競技には柔道部やラグビー部の猛者連が選ばれ、不慮の事故が起こる確率の高い障害物競争等には、ちょこまかと身のこなしの素早い者を抜擢したのでありましょう。
 吉岡佳世はと云えば彼女は虚弱な体からどの種目も出場を免除され、運営係と云う仕事をやることになったのでありました。各競技のクラス別得点記録、順番のつく競技では一位、二位、三位者の氏名の記録と云う仕事、教育委員会や保護者会関連の来賓等を受け付けて席まで案内し茶を出したりする仕事、その他雑用係であります。各学年にそういう役目を受け持つ生徒が数名居て、総勢六、七名、本部テント脇に陣取っていて先生の指示で様々用をこなすのであります。まあ実際のところは、記録つけ以外はまことにもって大して忙しい用事はなくて、なんとなく本部横のテントの下で椅子に座って競技を見ているのがその主な仕事と云う程のものでありましょうか。各学年の体の弱い者、怪我をしていて競技に参加出来ない者にその役は割り振られるのでありました。
 競技に出場はしないのではありますが一応この運営係もちゃんと体操服に着替えて、頭には自分のクラスに割り当てられた色の鉢巻を締めているのであります。吉岡佳世もその華奢な体を白いシャツに紺色のブルマーと云う体操服姿に拵えて、髪の毛は珍しく両耳の横辺りに振り分けて束ねて額の高いところに黄色い鉢巻を巻いているのでありました。なんとなく似合っていないその出で立ちが拙生にはなんとも微笑ましく見えたのであります。横に流れた前髪が黄色い鉢巻に被さっていて、それがまあ、とても可愛くもありました。両横に振り分けた髪の形も拙生は初めて見たので一寸いつもの印象とは違っていて、何かの拍子に目があった時にどうしたものか少々どぎまぎとなんかしたのでありました。吉岡佳世もなんとなく拙生に初めて見せるそう云った自分の出で立ちが照れ臭いのか、拙生を上目で見ながらはにかんだような笑いを返すのでありました。
(続)
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