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寄席通い [散歩、旅行など 雑文]

 もう三十年近くも前の話でありますが、拙生、新宿末広亭、上野鈴本演芸場、池袋演芸場、浅草演芸ホール等によく出没したものであります。ひょんなことから寄席の雰囲気が気に入って、通いつめると云う程ではないにしろ、日曜日毎にどこかしらの入場券を購入したものでありました。「ご趣味はなんでしょう?」と聞かれれば「はい、寄席の入場券の半券を集めるのが趣味のような道楽のような」と、素直に「寄席通いです」とは云わないところがいかにも拗ね者みたいで嫌味でござんしょう。
 改築前の池袋演芸場の雰囲気が一番好きでありました。大概は観客よりも出演者の方が多いと云う逆転の発想を地で行く、将来と云う点で考えればかなりスリリングな寄席で、その分噺家もどこかしら気楽な雰囲気でありました。二つ目の演者の時は、今考えればまことに無礼千万ではありますが、畳に寝そべって聞いたり出来たのでありました。この寄席にはお茶子さんが居て席までお茶を運んできてくれるのであります。なんとなく良い風情でありましょう。
 誰だったか忘れてしまいましたが当時の若手が、鈴本でとてつもなくお下劣な噺をしたら六代目円生に「そんな噺を鈴本でやるやつがあるかい、そい云ったものは池袋でやりなさい」と叱られたと云う噺を末広亭で聞いたことがあります。ま、池袋演芸場はそう云う由緒正しき、なんでも在りの寄席でありました。夜席が終わった後に二つ目の勉強会等もよく行われていました。
 しかし周りの風情という点では浅草演芸ホールが抜群でありましたかな。地下鉄の駅を出たら神谷バーで電気ブランを一杯ひっかけて、雷門から浅草寺を冷かしてから寂れたとは云え六区の興行街をぶらついて、それから夜席見物であります。引けたら関根で腹ごしらえして、その辺のバラック建ての飲み屋でモツ煮込みで一杯てな感じであります。ただこの小屋は"はとバス"の観光コースになっていて、噺家の変わり目でどやどやと団体客が場内に雪崩れこんで来て、二、三席程聞いたらまた忙しげにどやどやと帰って行くのがちと興醒めではありましたが。
 そう云えば、記憶が定かではありませんが、この二階がストリップのフランス座だったでしょうか。酔った客がフランス座に入るつもりで来たのにちっともその手の出し物がないので、高座の噺家に「裸はまだか!」となにやら地口遊びのような文句を云ったら、噺家が「私でよければ脱ぎましょうか」と返したと云う話があります。
 末広亭では何の拍子だったか、志ん朝師匠の住吉踊りを見せてもらったことがありました。入場券売りのお姉さんと入り口で入場券をもぎるお姉さん、それに誰だったか、確か志ん駒師匠でしたかな、とにかく四人で高座に出てきてひと踊りであります。志ん朝師匠は好きな噺家であったので、これは得をした気分になりました。末広亭の裏方のお姉さんの芸まで見ることが出来て、拙生思わず石原裕次郎になった気分で心の中で呟いたのでありました。「もぎりよ今夜も有難う」
 いやこれは拙生の作ではなくて随分昔に噺家がよくやった小話であります。
(了)
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