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お前の番だ! 574 [お前の番だ! 20 創作]

「習い性と云うのか、竟どうしても下手に出て仕舞うのです」
「万ちゃん、何時も云うけどさあこうなったからにはその内屹度、その態度は改めてね」
 あゆみが懇願六分に命令四分の口調で云うのでありました。
「押忍。鋭意頑張ってみます」
 万太郎は生真面目な顔つきで軽くお辞儀するのでありました。
「何か、この先もずうっと、ひょっとしたら一生、あゆみさんと万さんはこんな風な調子でいきそうな予感がするなあ、俺としては。」
 良平が苦笑しながら万太郎の決意に疑問を呈するのでありました。
「ところで多代ちゃんは、今日はどうしたの?」
 あゆみが語調を改めて香乃子ちゃんに訊くのでありました。多代ちゃん、と云うのは良平と香乃子ちゃんの娘の名前であります。
「両親が看てくれています」
「一緒に連れて来ればよかったのに」
「やんちゃで、とてもじっとしていそうもないし、あの子が傍に居たらお二人と話しも碌に出来ないと思って、今日は家であたしの両親とお留守番です」
「ふうん。でも、ご両親と一緒に暮らしていると、こういう時にちょっと便利かもね」
「そうですね。多代も滅多に怒らないお爺ちゃんとお婆ちゃんと一緒にお留守番している方が、あたし達と出かけるよりも好いみたいです」
「多代ちゃんは幾つになったんでしたっけ?」
 万太郎が良平に訊くのでありました。
「四歳。来年から幼稚園に通う予定だよ」
「へえ、早いものですね。ついこの前生まれたと思っていたけど」
「花司馬先生の処の剣士郎君が、今少年部で稽古しているんだろう?」
「ええそうです。流石に花司馬先生のお子さんだけあって、なかなか筋が良いですよ」
「小学校一年生になったすぐから稽古に来ていて、今は二年生で、なかなか頼もしくて、一年生と二年生の間でちゃんと心服を得ていて、すっかり大将格と云った感じかな」
 あゆみが続けるのでありました。
「ウチの多代にも常勝流を習わせたいけど、総本部まで通うのは大変だからなあ」
 良平がそう云って万太郎の方に徳利を向けるのでありました。
「良さんが教えれば良いじゃないですか」
「いや、どうせなら本格的な道場でやらせたいし、俺が教えるとすぐにおちゃらけて仕舞うか、如何にも面白くなさそうな仏頂面をするからなあ」
「若し事情が万端整うようなら、是非一つ、総本部道場にお預けください」
「何だか営業言葉のようだな。流石に宗家見習いだけあって商売にもそつがない」
「いやいや、鳥枝建設の腕利き幹部候補生の良さんに、冗談にもそんな事を云われると、僕としては冷や汗三斗、と云った心持ちですよ」
「そう云う云い草にしても、最近万さんもなかなか人が錬れてきたよなあ」
(続)
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