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あなたのとりこ 116 [あなたのとりこ 4 創作]

 均目さんは少し大袈裟に深刻そうな顔をするのでありました。
「支給しないと云うのは片久那制作部長がそう云ったのかい?」
「いやそうじゃない」
「じゃあ、土師尾営業部長から直接聞いたの?」
「いや、それもそうじゃない」
「じゃあ、何処から出た情報なんだい?」
「日比課長からそうらしいよと袁満さんが聞いて、袁満さんから俺が聞いたんだ」
「日比課長にボーナスを支給するかしないかの決定権があるのかい?」
 頑治さんは眉宇を上げて訝しそうな物腰で訊くのでありました。
「いやいや、そうじゃない」
 均目さんが頑治さんの察しの悪さにげんなりしたのか、苦笑って丸めた観光絵地図を持っていない方の手を小さな振幅で横に何度か振って見せるのでありました。
 要するに均目さんの話しに依れば、日比課長が営業打ち合わせと称して土師尾営業部長に会社近くの喫茶店に連れ出されて、そこでそんな話しをされた模様であります。と云う事は土師尾営業部長発信の情報と云う事になりますか。
 今年度の営業成績が前年に比べて今のところかなり落ち込んでいて、来年上半期の売り上げ見込みも全く芳しくない観測と云った情勢で、社員に暮れのボーナスを支給する目途が立たないと、土師尾営業部長はさも日比課長の常日頃の営業活動を暗に詰るような、それに且つ脅すような口調で宣したと云う事のようであります。まあ、その時の土師尾営業部長の口調に関しては伝聞のそのまた伝聞と云う事になるので、日比課長か袁満さんの土師尾営業部長に対する日頃の心証が反映されている可能性があるから、副詞的信憑性は保証の限りではないと均目さんは如何にも慎重そうな口調で付け足すのでありました。
「日比課長の売り上げ成績が随分と落ち込んでいるのかい?」
 頑治さんが聞くと均目さんは首を傾げるのでありました。
「確かに落ちてはいるけど、そんな詰られるような極端な落ち込みではないと云った感触のようだけどな、日比課長としては」
「じゃあ、袁満さんや出雲さんの出張売り上げが落ちたのかな?」
「袁満さんの言に依れば、前に比べると確かにここのところ漸次落ちてはいるけど、こちらも下半期が極端に悪いと云う事でもないらしいよ」
「じゃあ、残るは土師尾営業部長の成績、と云う事になるのかな」
 頑治さんが云うと均目さんは陰鬱そうな顔で頷くのでありました。
「特注関連の大口の注文が一番落ち込んでいると云う袁満さんの話しだな。それと毎年、大体決まった量の注文がある旅行斡旋会社や関連出版社、それに共済組合関連の会社や進物用品関係の会社への納品量も、今年は或る一社から丸々注文が無かったところもあって、グッと落ちたと云う按配かな。その辺は制作部でも仕事量の実感としてあるな」
「そう云った定期物とか特注物のセールスは土師尾営業部長が担当しているのかな?」
「そうね。土師尾営業部長と日比課長が分担している」
(続)
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