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あなたのとりこ 93 [あなたのとりこ 4 創作]

「どうして皆さんそんなに刃葉さんを憚るのでしょうかね?」
「どうしてと云われても、・・・どうしてかねえ」
 袁満さんが苦笑うのでありました。
「面倒臭いからじゃないっスか」
 今迄意見らしき意見をものさなかった出雲さんが云うのでありました。
「刃葉さんと関わり合うのが面倒臭い、と云う事ですか?」
 一応先輩に対する配慮から頑治さんは丁寧な物腰で訊くのでありました。
「まあ、そうっスねえ」
 出雲さんは頷いて頑治さんに愛想笑いを送ってくるのでありました。
「別に刃葉さんの腕力に畏れをなしていると云う訳ではないのですね」
「意外かも知れないけど刃葉さんは腕力を誇示して、人を威迫すると云うようなところは別に無いですからね。人を侮るような振る舞いはするけど、それは腕力に依っているんじゃなくて、自分以外の人間は皆浅はかなヤツに見えているからでしょうし」
「そうね、自分は他の有象無象と違ってご大層な人間だと信じ込んでいる節はあるね」
 日比課長が肯うのでありました。「俺なんか典型的な俗物と思われているようだし」
「まあ、それは当たっているけどね」
 袁満さんが混ぜ返すのでありました。
「そう云う袁満君なんかは屹度、お人好しだけが取り柄のようなそうでないような、気の利かない鈍間で鈍感なヤツだと思われているんだぜ」
「うん、確かにそうだろうなあ」
 袁満さんは別に逆らわないのでありました。成程お人好しなのでありましょうか。
「刃葉さんは高邁で気高い人なのでしょうかね」
 頑治さんは少し考えるような顔で訊くのでありました。
「まさか!」
 袁満さんが鼻で笑って吹き出すように云うのでありました。「あれを高邁とか気高いとか云うのなら、高邁と気高いの神様のばちが当たるよ」
 大して面白い云い回しとも思わなかったけれど、無視するのも会社の先輩に対して無愛想かと、頑治さんは軽い笑いを唇から零して見せるのでありました。
「そう云えば制作部の均目さんが、刃葉さんはああしているけどひょっとしたら途轍もない大志を抱いているのかも、とか前に飲み会で云っていましたよねえ」
「色んな武道を意欲的にやっているし武道を探求するために一見関係の無いバレエまで始めたくらいだから、屹度一廉の武道家になりたいと云う意志はあるのでしょうね」
 出雲さんが特に毒気の無い講評をするのでありました。
「でも会社の仕事振りから見ると、万事にちゃらんぽらんだし」
 袁満さんが疑わしそうな目で出雲さんを見るのでありました。
「会社の仕事はちゃらんぽらんでも、武道に関してはそうじゃないのかも知れませんよ」
「仕事がちゃらんぽらんなんだから、武道の方もちゃらんぽらんだとも考えられる」
(続)
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