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あなたのとりこ 41 [あなたのとりこ 2 創作]

 日比課長が話題を少々横滑りさせるのでありました。
「はあ。まあ。・・・」
 頑治さんは先輩社員に対しての弁えから、大いに遠慮がちに苦笑うのでありました。
「今迄、あんな妙な人は見た事が無かったねえ」
「妙と云うのか、好い加減と云うのか、適当と云うのか、・・・」
 この会話に山尾主任も加わるのでありました。

 山尾主任は頑治さんのコップにビールを注ぎ足そうとするのでありました。頑治さんは両手でコップを捧げ持ってそれを受けるのでありました。
「よくもまあ今まで、あんな調子で生きてこれたもんだとある意味感心するよ」
 今度は日比課長がそう云いながら山尾さんのコップにビールを注ぐのでありました。
「うっかり屋だから何をやらせても必ず一つ二つ抜けているし、丸っきり気は利かないし要領は悪いし、自分が仕出かしたポカでも他人事のように責任を全然感じていそうもないし、だから同じポカを何度も繰り返すし。典型的な、使えない人、だねあの人は」
 山尾主任が唾棄するような調子で並べ立てるのでありました。
「その辺を注意しても聞いているのかいないのか。寧ろそんな詰まらない事で一々目くじらを立てるな、なんて顔して笑っていて、まともに聞きもしない」
 日比課長が同調するのでありました。
「そうそう。逆にどう云う了見なのか注意しているこっちを見下すような顔している」
 山尾主任は一気にコップのビールを飲み干すのでありました。
「でも、刃葉さんはあれで結構傷付いているんですよ、本当は」
 今まで殆ど口を開かずに聞き役に徹していた均目さんが、脇からそっと会話に加わるのでありました。この思わぬ均目さんの闖入に日比課長と山尾主任は手にしていたコップを胸元で止めて均目さんの方を同時に見るのでありました。均目さんは山尾主任の空いたコップにビールを注ごうとして、瓶を傾けながら徐に差し出すのでありました。
「均目君も刃葉君の被害者の方だろうに、何で刃葉君を庇うんだい?」
 山尾主任が苦った顔で均目さんの酌を受けるのでありました。
「刃葉さんは要するにプライドの高い人なんですよ。ポカをやらかす自分を結構自分で責めているんです。でもまあプライドが高いから、人にそれを指摘されたり叱責されるのが苦手なんです。それで竟、不遜に見えるような態度を取ったりするんですよ」
「ほう、なかなかの分析家だな、均目君は」
 日比課長が皮肉っぽく云うのでありました。
「だからと云って万事好い加減なのは困るじゃないか。プライドが高いのなら、人に文句を云われない仕事をすれば良いんだ。別にそんなに難しいし仕事でもないんだし」
 山尾主任は与しないところを見せるのでありました。
「それはそうですが、刃葉さんの意地はそう云う方向には向かないんです」
 均目さんもなかなか後退りしないのでありました。
(続)
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