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あなたのとりこ 36 [あなたのとりこ 2 創作]

「配送所は近いのですか?」
 頑治さんが訊くと自ら運転席に座った袁満さんは一つ頷くのでありました。
「すぐそこだよ。歩いて持って行っても大丈夫なくらいだけど」
 袁満さんはそう云い終らない内に右折にハンドルを切るのでありました。袁満さんは何時も車で彼方此方に出張しているようだから運転は極めてスムーズな感じであります。
 成程車に乗ってほんの一二分走った辺りに目指す配送所はあるのでありました。すぐ近所、と云ったところでありますか。車が止まると頑治さんは助手席から降りて後ろのハッチを開けて荷を取り出し、配送所の中に入るのでありました。袁満さんも一緒に付いて来るのでありましたが、集荷依頼は頑治さんが丁度店のカウンターに居た女子社員に荷物と一緒に予め書いておいた発送伝票を手渡してあっさり完了するのでありました。
 帰りは頑治さんが運転を代わるのでありました。
「どうもあれこれ有難うございました」
 頑治さんはハンドルを操りながら助手席に座る袁満さんに頭を下げるのでありました。
「なあに、どういたしまして」
 袁満さんは如何にも人の良さそうな表情をして笑うのでありました。「ところで、唐目君はこの後何か予定はあるの?」
「いや、特には」
「ああそう。唐目君の入社歓迎と云う名目で、未だ会社に残っている連中でそこいら辺で一杯やろうか、と云う話しが持ち上がっているんだけど」
「ああそうですか。良いですね」
「大丈夫かい?」
「はい、勿論大丈夫です」
 ここまで会話したところで車は会社に帰り着くのでありました。

 倉庫内に置いていた自分のネクタイを取って袁満さんと一緒に三階の事務所に上がると、営業部のスペースには日比課長が残っているのでありました。土師尾営業部長に発送伝票の控えを渡そうと思っていたのでありますが、その姿は無いのでありました。
「営業部長はもう帰られたのですか?」
 頑治さんは発送伝票の控えを持った儘日比課長に訊くのでありました。
「ああ、あの人はとっくに帰ったよ」
「ああそうですか」
 頑治さんは発送伝票の控えを土師尾営業部長の机の上に置くのでありました。
「人に時間外の仕事を頼んだんだから、普通は待っているものなんだけどね」
 そう云う日比課長の言葉は如何にも不愉快そうな調子でありましたか。
「そんな神経なんか更々無いよ。自分の事しか考えていないんだから」
 これはロッカーを開けて上着を取り出しながらの袁満さんの言葉でありました。袁満さんは着ていた作業服を脱いで手早く取り出した上着に着替えるのでありました。
(続)
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