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あなたのとりこ 35 [あなたのとりこ 2 創作]

「そうか、それなら唐目君に頼もうか」
 土師尾営業部長は語気に大いに丸みを添えるのでありました。
「では、発送指示書をください」
 差し出しされた頑治さんの掌に、土師尾営業部長は発送指示書を近づけながら険のある横目で刃葉さんを睨むのでありましたが、刃葉さんの方は何処吹く風といった風に全くの無表情で帰り支度に取り掛かるのでありました。
「近くに運送会社の集荷を取り扱っている所がありますか?」
 今から運送会社に電話して集荷のトラックが来るのを待っているのも面倒なので、頑治さんは梱包を終えたら荷を自分で持ち込もうと思ってそう訊ねるのでありましたが、土師尾営業部長は戸惑ったように首を傾げるのでありました。どうやら営業部長ともなるとそう云った業務の細々した具体的な辺りはとんと疎いようであります。
「郵便局の裏に配送所があるよ。そこで集荷もやってくれる」
 背後から袁満さんの声が掛かるのでありました。
「ええと、郵便局と云うのは何処にあるのでしょうか?」
 頑治さんは袁満さんの方に顔を向けるのでありました。
「この辺の地理はあんまり知らないかな、唐目君は」
「ええ、書店と食い物屋やなんかは知っているんですが、郵便局の在り処なんかは」
「それなら荷造りが終わったら知らせてくれれば、案内がてら後で俺が一緒に行くよ。俺は未だもう少し残っているからさあ」
「ああそうですか。それは有難うございます」
 頑治さんは発送指示書を手にまた下の倉庫に逆戻りするのでありました。
 丁度頑治さんが荷造りを終えた頃合いで、袁満さんが倉庫に現れるのでありました。
「おや、手早いね」
 袁満さんは梱包された小振りの段ボール函を見ながら云うのでありました。「梱包なんかは前にやった経験があるの?」
「ええ。以前にアルバイトでやった事はあります」
「バンドもちゃんと定式通り掛けてあるし」
 袁満さんは荷物に回してあるビニールバンドの締め具合を確かめるように、人差し指を差し入れてバンドを少し持ち上げてから弾いてみるのでありました。「刃葉さんがやると横のバンドを先に締めた後から縦のバンドを締めたり、どう云う了見なのか縦横互い違いに回してあったりで全く好い加減だもの。それじゃ横バンドを締める意味が無い」
「ああ、そうですか」
 袁満さんの刃葉さんに対する愚痴っぽい云い方に、頑治さんはおいそれと同調するのも一種軽率かと考えて遠慮気味にこう無抑揚に返すしかないのでありました、
「まあ良いや。それじゃあ早速車に積もうか」
 袁満さんはそう云って荷の上面を中指で二度程軽打してから、自らその荷を持って駐車場の車に積み込むのでありました。
(続)
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