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あなたのとりこ 32 [あなたのとりこ 2 創作]

 物堅いと云うのか諄いと云うのか。しかしこれも、一種の煩さではありますか。まあそれは兎も角として、袁満さんと云う人は屹度几帳面な性格の人なのでありましょう。
 袁満さんは段ボールを下ろし終わると、売れ残って持ち帰ったのであろう中身の数を確認してから倉庫内の元々在った棚へそれを仕舞うために運ぶのでありました。
「あれ、商品の置き場所を変えたの?」
 奥から袁満さんの声が聞こえるのでありました。明らかに頑治さんに訊いているのでありましょうから、頑治さんは声の方へ向かうのでありました。
「いや、そこの棚に在った物は他に動かしてはいません。単に整頓していたのです」
「ふうん。いやね、何時もと違って妙に綺麗に荷物が積み上げられているから、置き場所を移動したのかと思ってさ」
 袁満さんはそう云いながら棚の段ボールの中身を点検するのでありました。点検の結果、ただ単に棚の見てくれが綺麗に整理整頓されただけである事を知って、安心したようにそこに自分が持ち帰った段ボールを、折角綺麗になった棚を乱さないように気を付けながら仕舞うのでありました。この人はぞんざいな性格ではなのは確かなようであります。
「棚が綺麗に片づいていると気持ちが良いね」
 袁満さんは荷を棚に納め終えてから手伝った頑治さんに笑いかけるのでありました。ちなみに云っておけば、手伝うために手を出した頑治さんに「ああどうも」と決まり文句の礼辞を弄するのは件の如し、でありました、
「片付いていた方が出し入れも効率的かと思いまして」
「確かにね。でも、ええと、・・・」
 袁満さんはそこで言葉を切って頑治さんの顔を覗き込むのでありました。「さっき聞いたんだけど、何て云う名前だったっけ?」
「唐目です」
「ああそうそう、唐目君か。その唐目君がそう云う心算でも、多分整頓する傍から刃葉さんが無神経に無茶苦茶にすると思うよ」
「そうですかね」
「そうに決まっているよ。あの人は整理整頓とか云う行為に全く無関心な人だから」
「ああそうですか」
 確かにそうかも知れないと頑治さんは思うのでありました。そしてそれは、池袋の宇留斉製本所から帰って来た刃葉さんが矢張り見事に実証してくれるのでありました。

 袁満さんが上の事務所に引き上げてから暫くすると刃葉さんが帰って来るのでありました。袁満さんは上に行く時に自分の車を駐車場の昇降機の上段に上げていたのでありましたが、その空いた下のスペースに刃葉さんの些か横着に運転する車が、如何にもせっかちそうに入り込んで来て急ブレーキ音を響かせて止まるのでありました。
 そう云うがさつな駐車の仕方は、屹度刃葉さんの仕業に違いなかろうと頑治さんは直感するのでありましたが、ま、見事に御明算なのでありました。
(続)
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