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お前の番だ! 577 [お前の番だ! 20 創作]

「あ、どうも」
 万太郎はニヤけた顔でお辞儀しながら頭を掻いて見せるのでありました。
「何だか万ちゃんの宗家継承を激励する調子から、あたしと万ちゃんに対する冷やかしに話しの中身が変わって仕舞ったんじゃない事?」
 あゆみは良平に話しの内容が急に変調した事に対して不満を述べるのでありました。
「いや、良いんですよ、本来今日はあゆみさんと万さんの冷やかしの会なんですから」
 そう云われて仕舞えば、あゆみとしても返す言葉に窮すると云うものであります。
「宗家継承の方は、まあ、あんまり鯱張らないで、淡々とやっていきますよ。考えてみれば僕はそうしか出来ないし、僕があれこれ力むと碌な事がないですからね」
 万太郎が少し真面目な顔で云うのでありました。
「そうだな。そう云う心胆が如何にも万さんらしいし、言葉に一種の安定感とリアリティーが備わっている。それにそんな了見だからこそ、万さんなりに宗家継承も上手く熟していくのだろうと思えるよ。現時点では、万さんが将来の宗家を継ぐと云うのが、様々な条件を客観的に鑑みても、一番妥当な選択と云う事が出来るしなあ」
「まあ、そうではないと云う意見も、立場が変われば多々あるでしょうが」
「そりゃあそうさ。しかし万さんが宗家を継承するまでに、未だ相当の時間がある。その間に大方を心服させれば、それで良い話しだ。万さんなら屹度出来るだろう」
「この前の理事会でも、全体として好意的に受け止められたと云う感触だったわ、万ちゃんが将来宗家を継ぐって云う事に関して」
 あゆみが言葉を挟むのでありました。「出席した理事さん達は、あたしの夫になる万ちゃんが宗家を継ぐのなら、それはそれで殊更の問題もないし、寧ろあたしなんかが将来の宗家になるより、万ちゃんの方が余程好都合だと云う雰囲気だったわよ」
「理事さん達が支持してくれたならまあ、今のところ按配や良し、と云う事だろうな」
 良平が頷きながら云うのでありました。
「まあ、要するに僕の心得次第、と云う事かも知れませんが。・・・」
「さっきも云ったように、万さんが宗家を継ぐ迄に未だ相当の時間があるんだから、その間に万さんの立派な心得を創り上げれば良いんだ。武道の稽古と一緒だ」
「あゆみさんと色んな意味で無難に一緒になれるから、取り敢えず宗家継承に頷いた、と云うのが現時点での僕の偽らざる本心なのです。実はだから、宗家継承の方は、今は未だ僕の中でリアリティーが薄弱なのですが、こんな事で良いのでしょうかね?」
「それで良し、だろうよ」
 良平があっさりと頷くのでありました。「俺達が結婚するに当たっても、当時ペーペーの内弟子だった俺には、家庭を持つだけの条件が全く整ってはいなかったけど、それでもまあ何とか、結婚は出来たし今までこうしてやってこられたわけだ。これは偏に鳥枝建設会長でもある鳥枝先生の厚意があったからだが、俺ですらそう云う助成を得る事が出来たんだから、況や万さんならもっと篤い周りからのサポートが集まるだろう筈だぜ」
 良平は自分のその言葉に自分で頷いて見せるのでありました。
(続)
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