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お前の番だ! 564 [お前の番だ! 19 創作]

 真入増太は翌日からほぼ毎日、稽古に通ってくるのでありました。住んでいるところが相模原のようでありますから、調布の総本部道場に通うにはなかなかの時間がかかるでありましょうが、それを苦にしない意気ごみがその巨体から溢れているのでありました。
 最初の頃は夜の一般門下生稽古だけに来ていたのでありましたが、一月ほどして稽古に慣れてくると、その前の時間の専門稽古にも顔を出すようになるのでありました。始めの頃は相変わらず他の門下生達に対しては無愛想で不敵な態度でありましたが、万太郎以下の薫陶を得てか、次第に態度も気組みも武道修行者らしくなってくるのでありましたけれど、この間の真入増太の様相の変化等の話しは後に譲るといたしましょうか。

 あゆみの部屋から内弟子部屋に引き上げてきた万太郎に、一人コーヒーを飲んでいた来間が敷き延べた布団の上で居住まいを正してから質問をするのでありました。
「理事会では、満場一致で折野先生が宗家を継ぐ事を了承されたのですか?」
「ああ、一応な」
「すんなりと満場一致ですか?」
「まあ、そう云う事になるかな」
 万太郎は寝間着代わりのジャージに着替え終えてから、自分の布団に潜りこむのでありました。それを見て来間もコーヒーを飲み干して布団の中に身を入れるのでありました。
「これで愈々、将来の常勝流の体制が固まったと云うわけですね」
「将来と云っても、未だ々々十年以上、或いは二十年以上先の話しだ」
「それはそうですが、しかしこれで将来も屋台骨は盤石、と云う事になりますね」
「どうなるか先の事は誰も判らないから、今の時点で一先ず、と云ったところだな」
「しかしあゆみ先生との結婚は、ごく≪近い話しなのでしょう?」
「それも来年の事になるだろうな。未だ半年以上先だ」
「何れにしても、万端おめでとうございます」
 来間は寝そべったままでお祝いの言を吐くのを不謹慎と考えたのか、態々起き上がって布団の上に正坐してから、横に寝ている万太郎にお辞儀するのでありました。
「ああ、有難う」
 万太郎もその儘寝ているのは幾ら弟弟子に対してと云えども不作法と思って、上半身を起こしてこちらも居住まいを正してから頭を軽く下げるのでありました。来間は万太郎の所作に恐縮して、再び丁寧にお辞儀してから布団に入り直すのでありました。
 その日昼に新宿の鳥枝建設本社の会議室を借りて、常勝流総本部の財団理事会が開かれたのでありました。当然そこでは万太郎とあゆみの婚約の発表と、将来宗家を婿養子になる万太郎が継ぐ事とすると云う議案が話しあわれたのでありました。
 宗家である是路総士、それに常務理事の鳥枝範士と寄敷範士は勿論、当の万太郎とあゆみ、それから各地から集った支部長連の重鎮、各界に在る多士済々の理事十五人が漏れなく集う臨時理事会と云う体裁でありました。尚、それ故その日の総本部道場の稽古は、花司馬教士と来間助教士の二人が総てを取り仕切っているのでありました。
(続)
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