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お前の番だ! 213 [お前の番だ! 8 創作]

「いや、印象に残ったのはどちらかとお訊きしているのですが」
「何、どうしてそんな事訊くの?」
 あゆみはコーヒーを一口飲んでカップを静かに皿に戻すのでありました。その手つきが万太郎の質問への警戒のためにか自然な動きと云う感じではなくて、静謐ではありながらも、少々構えたような動作に万太郎には見えるのでありました。
「いやまあ、お二方共あゆみさんの印象に必死に食い入ろうとしているような気配が、矢鱈と濃厚に見えるものですから」
「何それ?」
「率直に云いますと、お二方はあゆみさんに、少なからぬ好意を抱いていらっしゃるようにお見受けしたものですから」
「そうかしら?」
 あゆみはまたコーヒーカップを持ち上げるのでありましたが、万太郎の直截な言葉に少し動揺を覚えたのか、その時受け皿に置いてあるスプーンを少し騒がすのでありました。
「前から何となく僕はそう感じていましたよ」
「そんな事もないんじゃないの」
 恐らくしらばくれてそう云うものの、あゆみもその点は屹度既に感じていたろうと万太郎は思うのでありました。あの二人のあゆみに対する態度や物腰は、それをあゆみに判らせようとしている魂胆が寧ろありありと窺えるものでありますから。
「あれ、あゆみさんはそう感じませんか?」
「よくある親切以上には、特段感じた事もないけど」
 あゆみはしれっと、そう云うのでありました。これだから女は食えない、と万太郎は心の内で呆れるのでありましたが、しかし万太郎は女が食える存在かそうでないのか概括出来る程、女性と現実に親しく接した経験は今まであまりないのでありました。
「いやあ、道場でのあのお二人の他の人に対する態度と、あゆみさんに対する態度を比べて見ていれば、誰にだってそうと察しはつくと思います。僕にも判るくらいですから」
「へえ、そう?」
 あゆみはあくまで無関心を装って恍けるのでありました。
「ですから、当のあゆみさんはあのお二方のどちらに、より強い印象を持っておられるのかなと、僕としては考えるわけでして」
「そんな風に感じた事もないから、それにはどうとも応えられないわ」
「本当にあのお二方の、あの濃厚な秋波をお感じになった事がないのですか?」
「ないわよ」
 あゆみは少し不機嫌に云うのでありました。
「いやあ、そうですかねえ?」
 万太郎は片頬に笑いを作るのでありました。「あんなあからさまな態度に気づかない筈がないのですがねえ。それとも僕に云う必要がないから恍けておられるのですか?」
「ないってば」
(続)
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つねさん

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by つねさん (2015-03-23 16:13) 

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