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お前の番だ! 9 [お前の番だ! 1 創作]

 あゆみは未だ小学校に上がる前より父の是路総士や鳥枝範士、それから出稽古のためその日の道場に顔はないのでありましたが、鳥枝範士と同格の寄敷保佐彦範士辺りから直々に稽古をつけてもらっているために、万太郎や良平よりは遥かにその技は的確であり端正であり、また鋭利で、どちらかと云うと万太郎と良平があゆみから教えを受けていると云った風情になるのでありました。おまけに万太郎や良平よりあゆみの方が一つ歳上でもあるから、要するに姉弟子に新入り二人が稽古をつけて貰っていると云う感じであります。
 それからあゆみは体術よりは剣術の方の才に恵まれていて、鳥枝範士や寄敷範士と試合をしても三番中一本は取るくらいの腕前なのでありました。だから道場の剣の本稽古では時折、総士や範士二人の代稽古を務める事もあるくらいでありました。
「折野、もっと相手の肩をしっかりつめて!」
 あゆみが大きくはないにしろ、毅然且つ冷徹なる声で良平を相手に技を施す万太郎に横から指導を呉れるのでありました。
「押忍!」
 万太郎はそう発声して良平の肘を持つ手に力を籠めるのでありました。
「その後の出足が遅い!」
「押忍!」
「抑えが甘い!」
「押忍!」
 動きの一々にあゆみの叱咤を受けるものだから、万太郎は体が硬くなって全くぎごちなく技を終えるのでありました。
 次に良平に代わってあゆみが万太郎と対峙し彼に技をかけるのでありました。成程叱咤するだけあって万太郎の眉間に打ちこむその手刀は、この細い体の何処にそんな力があるのかと不思議に思うくらい、それを受ける万太郎の腕にズシリと重く圧しかかってきて、手刀があった瞬間に万太郎は体が浮かされて、後は肘も肩も極められた状態で俯せまで持っていかれて、その肘をこれまたきつく圧し極められて仕舞うのでありました。
 鳥枝範士の、肘も捥げよとばかりに圧し極める威力とは違った、肘の一点に鋭く錐を刺しこまれたような痛みが、万太郎の参ったのサインを送るもう片方の手に依る畳打ちの音を一際大きくするのでありました。しかし鳥枝範士の時と同じで、あゆみの手が肘から離れるとその容赦ない押圧に依る痛みは不思議にすぐに消え去るのでありました。
「次、面能美」
 あゆみがそう云うと腕をふりながら下がって、近くで正坐する万太郎に代わって前に出た良平が今度は彼女にあしらわれるのであります。良平も手もなくあゆみの技に屈服して、驚嘆と恐怖と面目なさがない交ぜになったような顔で必死に畳を打つのでありました。
 万太郎と良平があゆみに技を施しても彼女の技程彼女を翻弄する事が出来ず、懸命にその細い腕を極めようとする彼等の意とは裏腹に、あゆみの肘も肩も未だ充分に余裕のあるところを接触している掌を介して彼等に伝えるのでありました。幾ら年季が違うとは云うものの、自分より体格の劣る女性に歯が立たないと云うのは些かげんなりであります。
(続)
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こおりやま

 こおりやまであります、インドから帰ってきました。「インド人の和尚さん」のアシュラムで修行してまいりました。
 インドでは現地のワーカーがけんそんするという日本の美徳を生理的に理解できないらしく、ニコニコしていたらなめられて、口論になっていきなり顔を殴られたので「倍返しだ!」と手加減できない悪い癖がでてそいつを一方的にボコボコにしてやった事がありました(後日彼は食事の時口の中が切れてカレーがしみて痛いと恨めしそうにこちらをにらんできました)
 それで悪い事したなと思ってそいつに千ルピーをチップとしてあげたら「旦那ぁ悪いよぅ」といった感じで今度は私になついてくるようになりました、なんだか動物のようだなと思いました。
 一方でお寺にくるデリーの上のカーストの人たちは着ているものは洋服で喋る言葉は日常会話も英語でまるで西洋人のようでした。
 しかし私はどうしても女好きなようでお寺のようなストイックな環境にはあまり適さないようであります。
 これからフェリーに乗って三宅島に行って住み込みで介護施設で働きます!ありがとうございました。
by こおりやま (2014-01-28 14:06) 

汎武

インドまで行って修行した成果が見事に表れているコメントを有難うございます。
さて、今度は三宅島ですか。三宅島ではどのような修行の成果が出るか楽しみにしております。
by 汎武 (2014-01-29 11:48) 

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